急速に増加するデータ量や厳しいデータ保護規制、そして絶えず変化する市場ニーズ。
デジタル化が進む中で、これらに迅速に対応するために求められているのがデータベースのスケーラビリティです。
本記事では、スケーラビリティの基本的な概要と、ビジネスにおいてスケーラビリティがどのように役立つのか、解説します。
本記事で分かること
- データベースにおけるスケーラビリティとは
- データベースにおいてスケーラビリティはなぜ重要なのか
- NoSQLデータベースとリレーショナルデータベースにおけるスケーラビリティの比較
スケーラビリティとは
データベースにおけるスケーラビリティ(拡張性)とは、パフォーマンスや応答時間を損なうことなく、増加する作業量や増大するデータ量に対応できる能力を指します。
システムへの需要が増えても性能を維持するために、スケーラビリティは極めて重要です。
その目的は、データが増えたり、データベースへのアクセス数が増えたりしても、データベースの応答時間や可用性(システムが正常に動作している時間)が低下しないようにすることです。
スケーリング(拡張)戦略は、データベースがアプリケーションと共に効率的に成長できるかどうかを決定する重要な要素です。
そのため、効果的なデータベースマネジメントとは、高い可用性とパフォーマンスを維持しながら、リソースを最適化するために、水平スケール(サーバーを増やす方法)と垂直スケール(1台のサーバーの性能を上げる方法)の両方の技術を理解することを意味します。
データベースにおけるスケーラビリティの重要性
スケーリングは、クエリパフォーマンスと全体的なシステム効率に影響を与えるデータベースインフラの基本的な側面です。
アプリケーションがデータ量や同時ユーザー数の点で成長するにつれて、データベースはこれらの増加する要求に対応できるようにスケールする必要があります。
スケーリングの概念には、次の2つが含まれます。
- 単一サーバーの能力を高める垂直スケール
- データを複数のサーバーに分散する水平スケール
垂直スケールのメリット
ハードウェアの物理的制約によって垂直スケールは限界があるかもしれませんが、従来のSQLデータベースでは、全体のデータベースアーキテクチャを変更する必要がありません。
このアプローチは、既存のデータベースサーバーにCPU、メモリ、ストレージなどのリソースを追加することでデータベースのパフォーマンスを向上させます(垂直スケールは、ストレージとコンピューティングパワーを向上させるためにマルチノードクラスター内でも実装されますが、それでもマシンの物理的限界によって制限されます)。
水平スケールのメリット
一方の水平スケールは、大規模なデータセットを複数のノードに効率的に処理するように設計された、分散システムやNoSQLデータベースに固有のものです。
水平スケールは、データを複数のノード上に複数回複製することにより、データの冗長性を可能にします。
冗長データにはストレージコストがかかる一方で、本番環境でノードが故障しても完全なデータのコピーを提供できます。
そのため、耐障害性があります。
ノード間でワークロードを均等に分散することで、ボトルネックのリスクを減らし、各ノードのハードウェアを活用することでデータ処理速度を向上することができます。
シェアードナッシングアーキテクチャは、水平スケールの一例で、システム内の各サーバーが独立して動作し、リソースの競合を最小限に抑え、耐障害性を高めます。
このアプローチはダウンタイムを減らし、高い可用性を要求する分散システムにとって効果的です。
データベースのレプリケーションとシャーディング(複製)
もう一つの方法はデータベースのレプリケーション(複製)です。
レプリケーションとは、データベースのコピーを複数のノードに作成することで、1つのノードが故障してもデータが利用可能な状態を保つことができます。
レプリケーションでできること
- 分散システムにおけるデータの可用性と耐障害性を向上させる
- ユーザーが地理的に分散している場合、各地域のユーザーがローカルのデータコピーを使用できる
これにより遅延(データの処理や転送にかかる時間)を減らしてパフォーマンスを向上させることができます。
データベースシャーディングとは
データベースシャーディング(シャード分割とも呼ばれる)は、大規模なデータセットをシャードと呼ばれる小さく管理しやすい部分に分割します。
各シャードは独立して動作し、複数のサーバーでクエリを並列処理することができます。
シャーディングは、同じ時間枠でより多くのクエリを処理できるように、データをノード間に分散させるのに役立ちます。
特に、迅速なデータ処理とストレージの拡張が必要なアプリケーションで効果的です。
データベースにおけるスケーラビリティにおける課題
データベースを効果的にスケールすることには、パフォーマンス、コスト、管理のしやすさに影響を与えますが、最大の障壁となるのがデータベースサーバーのCPUやメモリなどのリソース制限です。
データ量とユーザーからの要求が増加すると、システムリソースが性能を維持するのに不足します。
その結果、クエリの実行が遅れてデータのボトルネックが発生し、システムの効率が低下する可能性があります。
垂直スケールは、物理的なハードウェアの限界に達するまでしか対応できません。
もう一つの一般的な課題は、水平スケールの複雑さを管理することです。
水平スケールに依存する分散データベースは、複数のノード間でデータの一貫性の問題に対処する必要があります。
性能の低下やデータの整合性の問題を引き起こすことなく、ノード間で負荷を分散することには、計画と高度なアルゴリズムが必要です。
スケーラブルなデータベースアーキテクチャでのコスト管理
特に変動する作業負荷がある環境では、コスト効率はデータベースをスケールする際の重要な考慮事項です。
垂直スケールは、より強力なハードウェアが必要になるためコストが増加し、最も強力なマシンでもリソースには有限の制限があります。
水平スケールは、長期的には通常より費用対効果が高いのですが、各サーバーに独自のDRAM(メインメモリ)、ストレージ、CPUが必要なため、複数のサーバーを取得する必要があり、垂直スケールされた単一のサーバーよりも初期コストが高くなります。
サーバーレスアーキテクチャは、需要に応じてリソースを増減させることで、パフォーマンスとコストの両方を最適化する潜在的な解決策を提供します。
しかし、このアプローチには注意が必要です。
サーバーレスアーキテクチャでも、ワークロードを処理するためにサーバーは必要ですが、これらのサーバーは通常、サーバーレスに見えるように呼び出し技術から抽象化されています。
上記で説明したスケーリングとボトルネックの課題は依然として適用されますが、アプリケーションにとってはより透過的になっています。
分散システムにおけるデータセキュリティとコンプライアンス
データベースが水平方向にスケールし、データが複数のサーバーに分散されると、データセキュリティとコンプライアンス(法令順守)はより複雑になります。
機密データを保護し、すべてのノードがGDPRやCCPAなどのデータ保護規制に準拠することを確保するのは課題となります。
分散システムは、異なる場所に存在する大規模なデータセットの整合性と機密性を維持するために、SQLデータベースとNoSQLデータベースの両方で機能する堅牢な暗号化とアクセス制御の対策を実装する必要があります。
上方向だけでなく下方向へのスケーリングの重要性
スケーラビリティの議論は、多くの場合、より多くの負荷に対応するための上方向へのスケーリングの文脈で行われます。
それはもちろん重要ですが、特にアドテック(広告技術)のような季節性のあるビジネスの場合、下方向へのスケールバックも同様に重要です。
そうしないと、システムのリソースを過剰に確保し、不要なリソースに対してコストを支払うことになります。
ビジネスを上方向にスケールするためのあらゆる行動は、元に戻せるものでなければなりません。
NoSQLデータベースとリレーショナルデータベースのスケーラビリティの比較
NoSQLデータベースとリレーショナルデータベースは、スケーラビリティに影響を与える基本的に異なるアーキテクチャを持っています。
SQL ServerやOracleデータベースなどのリレーショナルデータベースは、上述したように通常、垂直スケーラビリティに依存しています。
このアプローチはある程度まで効果的ですが、最終的にはハードウェアの物理的な制約により限界に直面します。
対照的に、NoSQLデータベースは水平スケールを念頭に設計されています。
データを複数のノードやサーバーに分散させることで、システムにノードを追加することで大量のデータを処理できます。
NoSQLデータベースの他の機能に応じて、このアーキテクチャはより線形的なスケーラビリティを提供でき、つまりノードを追加するにつれてパフォーマンスが比例して向上します。
この分散アプローチにより、NoSQLデータベースはデータの量と速度が継続的に増加するビッグデータアプリケーションの処理に特に適しています。
NoSQLデータベースは、今日のアプリケーションのスケーラビリティニーズに対応するように設計されています。
水平スケールの観点から、以下のようなメリットを提供します。
- 高可用性と耐障害性:NoSQLデータベースは、データのレプリケーションとシャーディングを使用して、個々のノードが故障してもサービスの中断なく他のノードにトラフィックをリダイレクトすることでシステムが機能し続けることを保証することが多いです。
- 柔軟なデータモデル:関係データベースが事前に定義されたスキーマ(データ構造)を必要とするのに対し、多くのNoSQLデータベースは柔軟でスキーマレスな設計を使用し、データ構造の変更を可能にします。 これは、非構造化データや半構造化データを扱うアプリケーションにとって重要です。
- 分散トランザクション:一部のNoSQLシステムは、結果的整合性や競合解決などの技術を使用して、分散トランザクションを確実に処理します。 これらの方法により、ノードが同期的に変更を処理しなくても、最終的にすべてのノードが同じ状態に到達することを意味します。
Aerospike:データ駆動型アプリケーションの未来に向けたスケーリング
Aerospikeは、データ集約型環境における速度、スケーラビリティ、回復力で注目される主要なデータベース製品として際立っています。
その特許取得済みのアーキテクチャとスケーラビリティ機能により、Aerospikeは業界標準のベンチマークで競合他社を明確に上回っています。
Aerospikeの水平および垂直スケール機能により、複数のノードにわたる拡張が可能で、大量のデータと高いトランザクションレートの処理に理想的です。
Aerospike Kubernetes Operatorは、変動する作業負荷に応じて動的にノードを追加または削除するスケーリングを自動化します。
この弾力的に成長する能力により、企業は不必要なインフラストラクチャコストを発生させることなく、ピーク時のデータ負荷を効率的に管理できます。
同時に、組織は個々のサーバーにリソースを追加するだけで、垂直スケール機能も活用できます。
スケールにおける速度のためのAerospikeのデータモデリングアプローチにより、大規模な導入におけるそのパフォーマンスがさらに向上します。
また、下記はデータ量が増加しても、クエリの応答時間は一貫して低く保たれます。
- ソリッドステートドライブの直接アクセス可能なメモリのサポート
- ハイブリッドメモリアーキテクチャ
- ノード間のスケーラブルなストレージのための独自のアルゴリズム
- データへのシングルホップアクセスのためのスマートクライアント機能などの技術
これにより、リアルタイム分析と低遅延の操作を必要とするアプリケーションに適した選択肢となっています。
Aerospikeのアーキテクチャがスケーラビリティをどのように支援するか
Aerospikeのアーキテクチャは、シャーディングやマルチスレッディングなどの技術を使用して、クラスター内のすべてのノードにわたってリソースの使用を最適化し、大規模なデータセットを効率的に処理するように設計されています。
スケーリングの複雑さに苦労する従来のデータベースとは異なり、Aerospikeのプラットフォームは、水平方向と垂直方向の両方にスケールする明確な道筋を提供します。
これにより、今日のインフラストラクチャを活用してスループットと信頼性を向上させます。
Aerospikeは、他のNoSQLデータベースとは異なり、線形的にスケールするという点で注目に値します。
スケーラビリティに関するAerospike製品の利点ページで説明されているように、これはクラスターにノードを追加するにつれて、システムの容量とパフォーマンスが比例して増加することを意味します。
これはボトルネックのリスクを減らすだけでなく、金融、電子商取引、通信などの業界で必要とされる高いトランザクション量での一貫したパフォーマンスをサポートします。
Aerospikeがスケーラブルなデータベースソリューションとして好まれる理由
Aerospikeの堅牢なスケーラビリティは、複雑なデータモデルと高速トランザクションを処理する能力、およびあらゆる条件下で強い一貫性を保証するオプションと組み合わさって、他のデータベース製品と一線を画しています。
そのハイブリッドメモリアーキテクチャは、データをメモリ内またはディスク上に効率的に保存します。
これは、データがペタバイトレベルまでスケールしても、取得時間がミリ秒以下のままであることを意味します。
これにより、Aerospikeはパフォーマンスを損なうことなく、ビッグデータとリアルタイムの意思決定を活用しようとする企業にとって優れた選択肢となります。
データインフラストラクチャの将来を見据える組織にとって、Aerospikeはニーズに合わせて成長するスケーラブルで費用対効果の高いソリューションを提供します。
KubernetesのネイティブサポートとAerospike Kubernetes Operatorを通じたスケーリング操作の自動化機能により、クラウドベースの導入を管理する上で比類のない柔軟性を提供します。
本ブログは2024年12月16日「Introduction to database scalability」の翻訳です。
【Aerospikeとは】
Aerospikeは、キーバリュー、ドキュメント、グラフ、ベクトルを有するマルチモデルデータベースです。 マルチデータモデルにより、リレーショナルデータベースでは扱うことが難しいあらゆるデータ構造・ビジネスニーズに柔軟に対応します。 また、超高速で信頼性が高く、高度な分散性により無限のスケール、スピード、コスト削減を実現し、企業のビジネス変革をサポートします。
お問合せ:https://aerospike.co.jp/contact/